DAY3:3月26日(土)その1
~まさかの睡眠不足~
夜も更けたころです。
ぼくは、寒くて目が覚めました。
暑かった昼間の京都とはうって変わり、3月の六甲山頂は恐ろしく寒かったのです。
腕時計を見ると3時。
寒さでまったく眠れません。
明るくなる前に二人を起こすのは申し訳ない。
車に逃げ込むのは気が引ける。
(2人しか寝られないから)
などいろいろ考えながら、震えながら、なるべく音を出さずに、寝返りを打っていました。
4時頃だと思います。
誰からともなく
「おい、起きてるか?」
と声が掛りました。
「寒くて眠られないぞ!」
そうです。
ぼくだけではなく、3人とも眠れないまま寒さを我慢していたのです。
このままだと、東北旅のT君のように熱を出しそうです。
そうならないように、まだ暗いうちに、早々と六甲のねぐらをあとにしました。
~フェリー乗船前、予期せぬ出来事が~
朝早く、明石港に着き、フェリー乗船の手続きをしていた時です。
係員に
「車検証を出してね」
と言われたY君が、車に取りに行きましたが、なかなか帰ってきません。
しばらくして、こわばった顔で戻ってくると
「やばい!車検証がない」
一同
「えー!」
係員は、
「車検証がないと、乗れないよ」
と、割と事務的な顔で言いました。
しかし、四国に渡れないと「四国一周」ができません。(あたり前ですね)
その後の係員とのやり取りの詳細は覚えていませんが、おそらく、3人で、平身低頭、粘りに粘ってお願いしたのだと思います。
かなり長い時間交渉していたような記憶があります。
ざっくりと流れを思い出すと、こんな感じだったと思います。
3人:「乗れないと困るんです」
係員:「そんなこと言われても、車検証がないと、車の全長が分からないから、料金が出せないでしょ」
3人:「全長は、巻き尺か何かで測れば分かるでしょ」
係員:「そんな人はいないね」
3人:「いなくても、測って乗せてよ」
係員:「メジャーなんてないよ」
3人:「探せば、どこかにあるでしょ?」
などと粘りに粘ったのだと思います。
おそらく、車の全長をメジャーか何かで測って、料金を算出してもらって、何とか乗れたのだと思います。
とにかく、フェリーに乗れたことだけは事実です。
(昭和って、いい時代ですよね)
車でフェリーに乗り込み、薄暗い、駐車スペースに車を置いた後、3人は、甲板に上がり、大海原の景色も見ずに、ベンチにひっくり返り、即、眠りに落ちました。
昨晩の寒さで3人とも、極度の睡眠不足だったのです。
~またまた、失態!~
寝ていたベンチのはるか下の方から
クラクションの音が何度も聞こえてきました。
「うるさいなあ。睡眠の邪魔なんだよな」
と考えながら、もうひと眠りしようとしたところ、
O君が
「まずい!起きろ。もう淡路島に着いてるぞ!」
と叫びました。
3人は、慌てて飛び起き、猛ダッシュで階下に降りました。
予想通りでした。
ぼくたちが、熟睡している間に、船は淡路島に着いていました。
下船しようと既に車に乗り込んでいたドライバーたちの大迷惑になっていたのです。
ぼくたちの車が邪魔で下船できない車であふれていました。
3人は、ドライバーたちに深々と頭を下げ、車を出しました。
恥ずかしいやら、申し訳ないやらで、しばらく、みんな無口でした。
昨夜の寒さのための睡眠不足が災いしました。

よく読めませんが、淡路島に上陸したというスケッチブックによるメッセージです。
当時は、こんなレトロな方法で、発信していたのですね。